不安・心配・ストレス等にさらされた時に、自分を守ろうとする心理的メカニズムのことを「防衛機制」と言います。
防衛機制の例と言えば
✓ 「あなたは鬱病です。」と医師に診断されても、「自分はそんな豆腐メンタルじゃない! 鬱病であるハズがない」と鬱病である事実を認めようとしない。
→ 防衛機制の「否認」
✓ 友達が持っている財布を見て自分も欲しくなり、買いに行ったけど品切れ。でも、カード入れが少ないし、汚れが目立ちそうな色合い・デザインだから買わなくて良かったと思うようにする。
→ 防衛機制の「合理化」
✓ 好きな歌手の歌い方を真似る。
→ 防衛機制の「同一視」
などがあります。
学校の授業や、看護師・介護福祉士等の資格取得でも防衛機制については習うため、割と身近に知られている心理的メカニズムであると言えます。
しかし防衛機制は、ある意味”諸刃の剣”。
自分を守るべく発動する規制本能が、実は自分を傷つける原因にもなり得るのです。
今回は
についてご紹介します。
防衛機制『ヴァイラントの4分類』
防衛機制には様々な種類があり、『ヴァイラントの4分類』によって階層的に分類することができます。
レベル1 精神病的防衛
(自己愛的精神病的防衛)
レベル2 未熟な防衛 ・ 転換 ・ 投影 ・ 否認 ・ 分裂
・ 代替 ・ 躁的防衛
・ 歪曲
・ 退行 ・ 投影 ・ 途絶 ・ 行動化 ・ 理想化 ・ 身体化 ・ 取り入れ
・ 病気不安症 ・ 希望的観測
・ ジゾイド幻想 ・ 投影性同一視
・ 受動的攻撃行動
レベル3 神経症的防衛 レベル4 成熟した防衛 ・ 統制 ・ 知性化 ・ 性的特徴化 ・ 隔離 ・ 打ち消し ・ 置き換え
・ 解離 ・ 合理化 ・ 抑圧
・ 逃避 ・ 外材化 ・ 反動形成
・ 静止 ・社会的な上向き、下向きの比較
・ 勇気 ・ 許し ・ 感謝 ・ 謙虚 ・ 慈悲 ・ 節制 ・ 忍耐 ・ 尊敬 ・ 昇華 ・ 抑制
・ 寛容 ・ 先取り ・ 同一視 ・ 愛他主義
・ 禁欲主義 ・ ユーモア
・ アクセプタンス(受容)
・ マインドフルネス
・ 感情の自己コントロール
・ 感情的レジリエンス
【出典:Wikipedia『防衛機制 Vaillantによる防衛機制の分類』より】
げっ・・・
防衛機制の種類って、こんなに多くあったんですね💦 |
私も調べてみて、初めて知りました。
こんなに多く、防衛機制として説明できる心理的メカニズムがあったとは・・・
一般的に広く知られている防衛機制としては、精神分析で有名なジークムント・フロイトと、その娘アンナ・フロイトが確立した概念が基本となっています。
フロイト親子が確立した概念
防衛機制は
受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。
とあるとおり、正確には無意識的に起こる心理的防衛本能のことを表します。
欲求不満などによって社会に適応が出来ない状態に陥った時に行われる自我の再適応メカニズムを指す。
広義においては、自我と超自我が本能的衝動をコントロールする全ての操作を指す。
ともあり、「なんのこっちゃ?」というのが正直な感想(笑)
図で見ると、大変わかりやすくなります。
エス・自我・超自我について
人間には
・ エス(イドともいう) 「動物的本能」
食欲・性欲・睡眠欲などの欲求や感情など、本来もつ本能
・ 超自我 「理性」
親や周囲(学校や社会など)から教えられた躾やルールにより、道理に従って判断したり行動する心の働き
があり、自我(エゴ)でエスと超自我をコントロールしている図式になります。
エスまたは超自我のどちらかが強すぎると精神病傾向になりやすいとも言われており、調整役である自我の役目が重要に。
自我を無意識的に手助けしてくれるのが防衛機制と言えるでしょう。
フロイト親子が確立した10種類の主要防衛機制
防衛機制は元々、オーストリアの精神科医であるジークムント・フロイトのヒステリー研究から考えられたもの。
後に彼の娘であるアンナ・フロイトが、父の研究をもとに児童精神分析の研究の中で整理、確立した概念です。
Wikipediaによると
最初にフロイトが記述した防衛機制は「抑圧」である。
アンナ・フロイトは主要な防衛機制として、退行、抑圧、反動形成、分裂、打ち消し、投影、取り入れ、自己への向き替え(自虐)、逆転、昇華の10種類を挙げている。
とあります。
ヴァイラントの4分類で見ると
レベル1 精神病的防衛 (自己愛的精神病的防衛) |
レベル2 未熟な防衛 |
・ 分裂
・ 投影 ※ レベル2にもあり |
・ 退行
・ 投影 ※ レベル1にもあり ・ 取り入れ |
レベル3 神経症的防衛 | レベル4 成熟した防衛 |
・ 抑圧
・ 反動形成 ・ 打ち消し |
・ 昇華 |
未分類:自己への向き替え(自虐)、逆転
以上のように分けることができると思います。
各分類別に主要10種の防衛機制について、見ていきましょう。
レベル1 精神病的防衛【分裂、投影】
分裂
相手や物事・事象等の対象や自己に対しての良いイメージ・悪いイメージを互いに別のものとして分け隔てること。
良い部分が悪い部分によって否定され、脅かされることを防ぎ、良い部分を守ろうとする心の働きをいいます。
◆ 具体例 ◆
付き合っている彼女は結構だらしなく、ベッドの上に衣服を脱ぎ捨てたまま眠ってしまっても、全くお構いなし。
だけど思いやりがあり、とても優しい女性。
だらしない所さえ置いておけば、すごく魅力的な女性なんだ。
投影(または投射)
自分の受け入れがたい感情や欲求を、自分以外の他者が持っていると考え(投影し)、それを指摘したり、非難したりする心の働きをいいます。
投射ともいいます。
◆ 具体例 ◆
お菓子を食べたのは、私が悪いんじゃない!
私がお菓子を取って食べやすい所にわざわざ置いた、ママが悪いんだ!
レベル2 未熟な防衛【退行、取り入れ】
退行
耐え難く認めたくない事態に直面した際に、現在の自分より幼い時期(幼児期や年少期など)の未熟な発達段階に戻って低次な行動や思考により、心の安定を図ろうとすることをいいます。
不安な時に他人の話を鵜呑みにしやすくなったりすることも、一種の退行といえます。
◆ 具体例 ◆
うちの長男、妹が生まれてから母親の気を引こうとしてなのか、泣きじゃくりやお漏らしが増えたんだよね。
取り入れ
「投影」とは逆で、他人の中にある感情や欲求、価値観などを自分のことのように感じたり、取り入れたりする心の働きをいいます。
◆ 具体例 ◆
私の成功や失敗を自分のことのように喜び、悲しんでくれる彼。
でも時々、行き過ぎてるように思うのよね…
「マドカの成功は、俺の成功だ~!」なんてさ。
ちょっと怖い・・・
レベル3 神経症的防衛【抑圧、反動形成、打ち消し】
抑圧
実現困難な欲求や苦痛を伴う経験・体験、受け入れがたい出来事などを無意識の中に封じ込め、忘れようとする心の働きをいいます。
ジークムント・フロイトは、この「抑制」を最も基本的な防衛機制と考えています。
一時的に忘れるだけで、他人に指摘されると気づく「否認」とは違い、「抑圧」は意識より深い心の深部にまで押し込め、基本的には思い出せなくなってしまいます。
抑圧が度を超すと、二重人格と呼ばれる解離性障害が引き起こされる要因として考えられる場合もあります。
◆ 具体例 ◆
酷い虐待を受けたという記憶がなく、思い出そうとしても思い出せない。
反動形成
本心と裏腹なことを言ったり、その思いと正反対の行動をとることにより、本当の自分を隠そうとする心の働きをいいます。
「あまのじゃく」な人をイメージすると、わかりやすいかもです。
◆ 具体例 ◆
本当は彼女のこと大好きなのに、そっけない態度を取ったり、ちょっかいかけたりする、わかりやすい男子。
打ち消し
罪悪感や不安、恥などの感情を生じさせた行為を再度やり直したり、逆の行動をとって無効にしようとする心の働きをいいます。
◆ 具体例 ◆
浮気をしてしまった罪悪感から、普段以上に彼に優しく振る舞った。
レベル4 成熟した防衛【昇華】
昇華
社会的に認められない欲求や情動(性的・攻撃的)を、社会的・文化的に認められる価値ある行動へと置き換える心の働きをいいます。
◆ 具体例 ◆
攻撃的本能を、ボクシングのタイトルマッチで発揮する。
未分類【自己への向き替え(自虐)、逆転】
自己への向き替え(自虐)
相手に向けている感情を、自分自身に向き変えてしまう心の働きをいいます。
本当は相手が悪いと思っているのに自分自身を責めてしまい、抑うつ的になる場合は典型例とされます。
◆ 具体例 ◆
彼氏が暴力振るうのは、私がだらしないからなのよね。
私が悪い、私が・・・
逆転
感情や欲望を反対の性質のものに変化させる心の働きをいいます。
愛情が憎悪に変わったり、サド傾向がマゾ傾向になったりと、反対にある感情や欲望に変えることで、心の安定を保とうとします。
◆ 具体例 ◆
のぞき見していた変質者が、今度は露出狂として逮捕された。
【参考、引用】
【ジョブデポ看護師 ナースのヒント『防衛機制と看護|基礎知識や11種類と具体例、看護の流れやポイント』】
【介護ラボ こころとからだのしくみ『【適応とは?】適応機制とライチャード2つの分類 vol.22』】
意識的に行動することでマイナスな防衛機制を発動させるな!
防衛機制は様々な種類があり、無意識的に行われる心理的防衛本能です。
心の安定を図るためとはいえ、防衛機制の中には自分にとってマイナスに働くものもあります。
「自我を保つ」ための手助けとなる、無意識的に起こる防衛機制。
防衛機制だけに頼ってしまうのは、それはそれで良くないこと。
ある意味「本能的機制」ですから、どうしようもなくなったときに起こるものなのです。
日頃から起こっている事象への対応・対処・解決や、ストレス発散といった
必要があります。
自分を守れるのは、自分自身。
自分を変えれるのも、自分自身。
自分を変えるためには、どうしようもなくなる前に、意識的に行動することが大切。
人間の心理的メカニズムは、奥が深い。
防衛機制の役割を知り、マイナスな防衛機制を発動させないよう意識的な行動を取り入れながら、自分自身を磨き守り抜いていきましょう。
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